NPO法人全国初等教育研究会(JEES)は、2022年12月24日に、第18回JEES教育セミナーをオンライン開催いたしました。GIGAスクール環境の整備から2年目を迎え、全国各地でさまざまな活用が広がっていますが、なかでも若手の力を上手に引き出しながら学校経営に活かしている事例を紹介していくという内容でした。
メインの実践発表は、wutanの「校長先生のGIGA日記」で連載いただいていた札幌市立稲穂小学校校長・菅野光明先生にお話しいただきました。「校長先生のGIGA日記」はwutanの人気連載ということもあり、菅野先生から直接お話をお聞きできるということで全国から約500名のお申込みがありました。
セミナーの後半ではJEES理事の新保元康先生にコーディネータをお願いし、菅野先生のほか、JEESメンターの富士市立青葉台小学校校長・吉野和美先生と、岩見沢市立東小学校校長・村上咲枝先生の4名でパネルディスカッションを行いました。
■ICTの力を「借りる」という意識
菅野先生は、GIGAスクール環境を活かすために必要な土台として「基礎基本の知識・技能・学び方をしっかり子どもに身につけさせる」「そのために先生がわかりやすく教える」という二つを挙げ、このときに教材やICTに助けてもらうという考え方が必要だと述べられました。ICTを活用するというよりは「ICTの力を借りる」という考え方です。これにより、活用するまでのハードルがとても下がったと振り返られていました。
さらに、若手はICTスキルが高く、活用の抵抗感が少ないものの、経験不足により、授業での活用がうまくいかないこともあるため、そこはベテランの先を見通す力や指導の貴重なノウハウを学び、お互いの強みをミックスして進めていくという学校経営の考え方についてもお話してくださいました。
また、菅野先生は「これからは『子どもが学びとる』授業に変わっていかなければならないのですが、先生たちの『授業観』の転換が非常に難しい」と感じているそうです。そこで、校内の若手の先生を中心に、先生と子どもが「シンキング・サイクル」を意識して、少人数で共有した資料から情報を読み取ったり、整理したりする学び方を進めているところだとお話しされていました。
■ICTを活用する場面づくり
吉野先生は、自校で取リ組まれているGIGA環境を使った授業実践についてお話しされました。授業実践について振り返りをする事後研修では必ずタブレットを使うことで、全職員が活用せざるを得ない状況をつくっているとのこと。そして情報収集の仕方がとても大切だと考え、情報活用能力に関する授業も全学年で実践しているとのことでした。
村上先生は今年校長一年目、赴任してまず取り組んだこととして、働き方改革を進めたお話をされました。先生方から現状をヒアリングし、具体的に取り組んでいった事例について紹介。必要な連絡は校務支援システムを活用し、職員間や保護者との連絡手段は積極的にICTを活用。時には外部の専門家の力も借リて、研修を進めているそうです。
セミナー参加者の質問にも回答しながらパネルディスカッションは進み、第18回JEES教育セミナーは大盛況のなか終えることができました。JEESは今後も引き続き先生を応援する事業を展開していきます。