NPO法人全国初等教育研究会(JEES)は、第11回JEES教育セミナー「『見方・考え方』を育む授業づくり実践講座~社会科授業づくりのポイント~」を、2018年11月3日に開催いたしました。
今回は、フリーマガジン『wutan』2018年2学期号の巻頭特集で取材させていただいた、JEES理事・東北学院大学 佐藤正寿先生にご登壇いただき、子どもたちの「見方・考え方」を育む社会科の授業づくりをテーマに、講義と模擬授業、ワークショップを通してお話しいただきました。
NPO法人全国初等教育研究会(JEES)は、第11回JEES教育セミナー「『見方・考え方』を育む授業づくり実践講座~社会科授業づくりのポイント~」を、2018年11月3日に開催いたしました。
今回は、フリーマガジン『wutan』2018年2学期号の巻頭特集で取材させていただいた、JEES理事・東北学院大学 佐藤正寿先生にご登壇いただき、子どもたちの「見方・考え方」を育む社会科の授業づくりをテーマに、講義と模擬授業、ワークショップを通してお話しいただきました。
佐藤先生はまず、「主体的な学び」の実現のため、そして学習指導要領解説の「小学校社会科の目標」にある「よりよい社会を考え、主体的に問題解決しようとする態度を養う」ためには、「問いを大切にする」ことが必要だと強調されました。教師からの発問を工夫し、子どもたち自身から「考えてみたら不思議だ」「なぜ?」などの「問い」を生めば、問題意識を持って授業に取り組むことができ、より理解度や思考力を伸ばすことができるからです。その具体的な方法として、資料の一部を隠して知りたい気持ちを起こさせ学習の動機づけとする仕掛けや、子どもたちの疑問を基に発問を組み立てる働きかけ方などを、実例をあげて説明されました。
佐藤先生は「問い」について、「見方・考え方」を働かせるものになっているかどうかも重要なポイントだとし、北俊夫による社会科における「見方・考え方」の視点を紹介。それを踏まえ、子どもたちが「空間軸」「時間軸」「社会システム軸」という三つの視点をツールとして働かせ、「習った視点を使って歴史を見ることができた」と自覚できれば、その子にとっての歴史は暗記ものではなくなるのではないかと語りました。
さらに、総合的な学習の時間における「探究的な学習」で行われている、「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現」という考え方は問題解決的な社会科の学習にもマッチする、というお話もありました。しかし、実際の社会科の授業ではこの情報収集の段階が抜け落ちていることが多いため、いきなり問いを発するのではなく、まずはしっかり資料を読み込むことが大切であると強調されました。
そして、「見方・考え方」をフル活用する発問について詳しく解説。佐藤先生は「ゆさぶり発問」と「キー発問」という発問方法を紹介されました。「ゆさぶり発問」とは、知っているようで知らない、あいまいさを問う発問のこと。たとえば、「バスのタイヤの数はいくつですか」(有田和正氏)や、「信号の赤の位置はどこか」という発問がそれにあたります。当日の大人の参加者の間でも意見が割れるような発問でした。「キー発問」とは一単元を貫くねらいに迫る中心的な問いのことで、5W1H発問(「いつ」「どこ」「だれ」「なに」)、選択発問(「賛成か反対か」「何を選ぶか」)、焦点化発問(「条件は何か」「……と言えるか」)などがあるとの説明がありました。
社会科の授業で欠かせない、グラフや写真といった資料の提示方法のコツも紹介。グラフの読み取りや資料の比較に便利で基礎的な力を身につけられる教材として、教育同人社の社会科資料集(教育出版準拠版)に付属する「社会科アクティブノート」が紹介されました。参加者にも実際の「社会科アクティブノート」の紙面の一部が配布され、こういった補助的な教材によりこれまで佐藤先生から説明があった発問が容易にできることを確認しました。
模擬授業は、「オリンピックが開催されやすい国について資料から考え、東京オリンピックが開かれた時代の状況を理解する」とのねらいを想定して行われました。「オリンピックについて知っていることは」「どのような国々で開催されたのか」「世界地図を見て気づいたことは」などの発問について、ノートに書く、隣の人と話し合う、席順に発表するなどの活動が次々と展開され、授業はスピーディーに進行。参加者は資料提示や発問の組み立てといった前半の講義内容を、児童の立場で体験しました。
模擬授業後のワークショップでは、参加者同士が学んだことをシェアした上で、会場からよせられた質問について佐藤先生にご回答いただきました。
「タスクに追われて教材開発をする時間がとれない」
(佐藤先生ご回答)次年度担任する学年が決まり次第、1学期の分は春休みに、2学期の分は夏休みに取り組むとよいと思います。また、授業は教科書をベースに関連資料を+αすることを目標にすると長続きするでしょう。
「年間の単元構成はどう考えればよいのか」
(佐藤先生ご回答)やはり基本は教科書。単元全体を自主編成するようなものは子どもたちにも力がないと難しいですが、年に2度でもそういった授業を取り入れるだけで子どもたちの思考力も違ってくると思います。
最後に佐藤先生は、単元の最初の1時間目は重要だと強調。ここで児童に、いかに学習内容にフィットする問いを持たせられるかが大切で、導入授業の研究は、もっと盛んになるとよいと締めくくりました。
講義と模擬授業の充実した内容でした。子どもの立場で授業を受けることで、先生の講義内容の効果を体験できました。
自然と、考えたくなる。調べたくなる。ワクワクする模擬授業でした。情報を一方的に与えるのではなく、見方・考え方を示しながら本時のねらいに迫ることの大切さを感じました。
それぞれの活動が授業のねらいを達成するために考えられていて、感動しました。このような授業を行うためには、普段からのネタ探しが欠かせないと改めて思いました。
現在、教職員を指導する立場にありますが、本市の教職員に伝えたい内容ばかりでした。社会は「よりよい未来をつくるための学習」だと思います。社会嫌いの子どもを減らせるよう、今いる立場で努力していきたいと思います。